郷間正観氏は、中国の水墨画の正統的伝統に基づき、西洋画と日本画の技法も取り入れた独自の画風を切り拓いてこられた、注目すべき画家であります。
力強い墨色のなかに静かな彩りを添え、詩と書と画が一体化した郷間正観氏の、人物画、風景画などの数々の書画には、人間と自然に対する深い思いが豊かな感受性と確かな技法によって見事に表現されており、魅力溢れる独自の世界が創りだされております。
今回の作品には、いずれも、岩手の美しい自然と純朴な人間性とがよく表現されておりますが、とりわけ代表的大作というべき「啄木歌韻四季水墨画」襖絵は、岩手の生んだ不世出の歌人石川啄木の故郷にたいする深い愛着の念が生き生きと再現されている傑作であると思います。
これらの作品には、明朗闊達で進取の気性に富み、何事にも全力で取り組む意欲と誠実な人柄の持主である、郷間正観氏の豊かな人間性と真摯な努力の跡とが滲みでており、ホテル森の風鶯宿を訪れる人々に、必ずや心の安らぎと大きな感銘を与えること でありましょう。
東京大学名誉教授 佐藤 誠三郎